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福岡地方裁判所小倉支部 昭和50年(ワ)113号 判決

原告

笠井雅之

被告

下村昭臣

ほか一名

主文

被告等は、各自原告に対し、金七四万八、二二九円及びこれに対する昭和四七年三月一四日より完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

被告下村昭臣は、原告に対し、右金員の外金二万九、七〇〇円及びこれに対する昭和四七年三月一四日より完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告の被告等に対するその余の各請求を棄却する。

訴訟費用はこれを四分し、その一を被告等の負担とし、その余を原告の負担とする。

この判決は右第一、第二項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

(原告)

一  被告等は、各自原告に対し、金三三三万九、四三六円及びこれに対する昭和四七年三月一四日より完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告等の負担とする。

との判決と仮執行の宣言

(被告等)

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

との判決

第二当事者の主張

(請求原因)

一  (事故の発生)

被告下村は、昭和四七年三月一三日午後九時一〇分頃、大型貨物自動車(車両番号泉一一や八〇八号)(以下本件自動車ともいう。)を運転し、北九州市八幡東区桃園二丁目一四番先の交通整理の行われている交差点(以下本件交差点ともいう。)を久喜町方面から桃園町方面(西から北)に向い左折する際、同交差点を信号に従い久喜町交差点方面(西から東)に向つて直進して来た原告運転の原動機付二種自転車に自車左側面を衝突させて、その衝撃により、原告に対し左上眼瞼挫創、左上肢擦過傷、右膝関節挫滅創、右側胸部軟骨々折陥没、右肩挫傷、左鎖骨々折等の傷害を負わせた。

二  (責任原因)

1 被告下村は、自動車の運転業務に従事する者であるところ、前記日時場所において左折するにあたり、左折の合図をし、あらかじめその前からできる限り道路の左側に寄つて徐行し、左側の並進、後続の各車両との安全を確認して左折すべき注意義務を有するのにこれを怠り、その合図をしたが徐行せず、道路左側に寄らないで原告運転の車両との安全を確認することなく、時速三〇キロメートルで漫然左折進行した過失により、本件事故を惹起したものであるから、民法第七〇九条により、不法行為者として本件事故による原告の損害を賠償すべき義務がある。

2 被告坂本は、被告下村の雇主であり、かつ本件自動車の所有者であつて、同被告をして運行の用に供せしめていたものであり、かつ本件事故は被告坂本の事業執行中に発生したものであるから、同被告は、自賠法第三条及び民法第七一五条に基づいて、本件事故によつて原告が蒙つた損害を賠償すべき義務がある。

三  (損害)

本件事故による原告の損害は次のとおりである。

1 治療費 金三万九、六五一円

右治療費の内訳は次のとおりである。

(一) 金三万二、八六五円

但し原外科医院に対する支払分

(二) 金三、九三五円

但し九州厚生年金病院に対する支払分

(三) 金一、六〇五円

但し田原眼科医院に対する支払分

(四) 金一、二四六円

但し八幡製鉄病院に対する患者負担分支払分

2 附添看護料 金一〇万五、五〇〇円

3 通院費用 金五、四七〇円

4 入院雑費 金二、七二五円

5 車両修理費 金七万〇、八八〇円

6 事故車運搬料 金三、五〇〇円

7 事故車保管料 金二万八、〇〇〇円

8 眼鏡買替金 金一万四、〇〇〇円

9 入院期間中の慰藉料 金三〇万円

原告は、本件事故により昭和四七年三月一三日より同年五月一一日まで二ケ月間入院治療を余儀なくさせられたが、これに対する慰藉料として金三〇万円の給付を受けるのが相当である。

10 通院期間中の慰藉料 金四〇万円

原告は、本件事故により退院後も昭和四七年五月一二日より昭和四八年一月二三日まで通院治療を余儀なくさせられたところ、右通院期間中の精神的苦痛に対する慰藉料として金四〇万円の給付を受けるのが相当である。

11 後遺症に対する慰藉料 金五〇万円

原告は、本件事故当時高校生であり、国立大学進学を希望していたが、本件事故により一時勉学不能の状態となり、また、眼球に自賠法施行令別表に定める後遺症等級第一一級に該当する色素のむら及び歪視の後遺症を残す状況となつて結局志望校への進学をあきらめ、心ならずも中京大学へ進学したところ、後遺症のため現在なおその苦痛を味つている。これに対する慰藉料として金五〇万円の給付を受けるのが相当である。

12 逸失利益 金二七七万八、七六五円

前記後遺症による労働能力の喪失率は、労働基準法施行規則別表第二身体障害等級表によれば、二〇パーセントであるから、原告の労働能力喪失による逸失利益は金二七七万八、七六五円である。右計算の根拠は次のとおりである。

(一) 基礎年収金六三万二、四〇〇円(但し労働省大臣官房統計情報部賃金統計課編「賃金構造基本統計調査報告」中産業、企業規模、学歴別新規学卒及び中途採用者の平均月間所定内給与額表昭和四七年度分によるもの)

(二) 原告が稼働可能な年数四一年(但し六三歳まで)

(三) 右年数に対応するホフマン式計算による係数二一・九七〇

四  (損害の填補)

前項の損害合計金四二四万八、四九一円のうち、原告は、既に自賠責保険から金八七万九、〇五五円の給付を受け、被告等から金三万円の見舞金の給付を受けているので、右金員から金九〇万九、〇五五円を控除した金三三三万九、四三六円が被告等が支払うべき賠償額である。

なお、原告は、自賠責保険から金一二五万円の支給を受けた形となつているが、そのうち金三三万四、三八〇円は斎藤病院に支払われ、金三万六、五六五円は八幡製鉄病院の保険の差額分に支払われているので、原告本人が給付を受けたのは、後遺症に対する補償金七五万円を含んだ右金八七万九、〇五五円である。

五  (結論)

よつて、原告は、各自被告等に対し、金三三三万九、四三六円及びこれに対する本件事故発生の翌日である昭和四七年三月一四日より完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(請求原因に対する認否)

一  請求原因第一項の事実中、原告主張の日時、場所において、左折中の被告下村運転の本件自動車と同車の左側を直進して来た原告運転の単車とが接触したことから、原告が受傷した事実は認めるが、傷害の部位とその程度は知らない。

二  請求原因第二項の事実は否認する。

なお、本件自動車は被告坂本の所有名義になつていたが、同被告は、五〇有余歳の女性であつて、本件自動車の運行に対していかなる支配も及ぼしておらず、またどのような利益にもあずかつていなかつた。

三  請求原因第三項の事実は知らない。

原告は、後遺障害に伴う労働能力の低下の主因をなすものとして、「眼球の色素のむらと歪視」を強調しているが、これらは後遺障害の等級には全然該当しない。

強いて後遺障害と考えられるものを挙げると、肩関節の機能障害があるが、これも利き腕とは反対の左肩であり、これに原告の年齢及び事故後四ケ月も経ない昭和四七年七月一日には症状固定に達しており、さらにはその程度も第一二級五号に過ぎないことを総合すると、右機能障害に伴う収入減は到底考えられない。

加えて左鎖骨中央部の変形も、労働能力の低下にはなんら係わりはないというべきである。また、障害等級が第一一級になつたのも、右変形が併合された結果に過ぎない。

従つて、原告に前記程度の障害が残つたとしても、就職する職種が制約されたり、他の者と比較して待遇面で不利益な取扱をされるとはいえない筋合である。

(抗弁)

一  被告坂本の免責

1 被告下村は、あらかじめ本件自動車の型式に徴して可能な限りこれを左側端に寄せると共に、適式な左折合図をしながら、左後方の安全を確認した上で、交差点の状況に応じた速度で左折を開始したところ、左折合図を無視し、更には前方に対する注視を怠つた原告運転の単車が、その後方からかなりの速度で本件交差点に突つこんできたことから、本件事故が発生した。

2 本件自動車には構造上の欠陥ないしは機能上の障害はなかつた。

二  過失相殺

仮に、被告下村に過失があつたとしても、前記のように本件事故の発生には原告の過失が極めて大きく寄与しているのであるから、原告の右過失は、被告等が賠償すべき原告の損害を算定するにつき斟酌されねばならない。

(抗弁に対する認否)

いずれも否認する。

第三証拠〔略〕

理由

一  (事故の発生)

原告主張の日時、場所において、左折中の被告下村運転の本件自動車と同車の左側を直進して来た原告運転の単車とが接触したことから、原告が受傷した事実は当事者間に争いがないところ、いずれも成立に争いがない甲第一一号証、同第一三ないし第一七号証、原告本人の供述によれば、原告は、右事故により、左上眼瞼挫創、左上肢擦過傷、右膝関節挫滅創、右側胸部軟骨々折陥没、左肩挫傷、左鎖骨々折等の傷害を負つた事実を認めうる。右認定に反する証拠はない。

二  (責任原因)

1  いずれも成立に争いがない甲第三、第四号証の各一、二、同第八、第九号証の各記載、同第六、第七号証の各記載の一部、原告本人の供述の一部を総合すれば、被告下村は、昭和四七年三月一三日午後九時一〇分頃、本件自動車を運転し、本件交差点に差しかかつた際、その手前約三一メートルの地点で左折の合図をしたが、道路左端に寄らないで左後方の安全を確認することもなく、本件交差点を前車に続いて時速三〇キロメートルで左折進行したため、左後方から時速約四〇キロメートルで本件交差点を単車で直進して来た原告が、前方に対する注視を怠り本件自動車の動静に注意を怠つたこともあつて、本件事故が惹起された事実を認めうる。右認定に反する甲第六、第七号証の各記載部分、原告本人の供述部分は採用せず、他に右認定を左右する証拠はない。

右認定事実によれば、本件事故は、前方注視を怠つた原告の過失によることもさることながら、交差点を左折するに際しては、適式の左折合図をして、できる限り道路の左端に寄り、徐行し、左後方の安全確認をなすべき注意義務があるのに、単に適式の左折合図をしたのみでその余の注意義務を怠つた被告下村の過失にも起因することは明らかである。

よつて、被告下村は、民法第七〇九条により直接の不法行為者として本件事故による原告の損害を賠償すべき責を負う。

2  成立に争いがない甲第一二号証の記載、前掲甲第八号証の記載の一部を総合すると、被告坂本は、本件自動車を所有し(その所有名義自体が同被告であることは、同被告において認めるところである。)、これを被告下村に貸与していたものであること、被告下村は、訴外坂本工業株式会社の運転手として勤務し、被告坂本から貸与された本件自動車を使用し、同訴外会社の事業執行中に本件事故を惹起したこと、以上の事実を認めうる。右認定に反する甲第八号証の記載部分は採用せず、他に右認定を左右する証拠はない。

右認定事実によれば、被告坂本が本件自動車の運行支配、運行利益を有しなかつたことにつき特段の事情を認めえない本件においては、同被告は、本件自動車の保有者として、自賠法第三条に基づいて本件事故による原告の人的損害を賠償すべき責に任ずるというべきである。

なお、被告坂本主張の免責の抗弁は、前記のとおり本件事故の発生が被告下村の過失にも起因するから、その余の点について判断するまでもなく失当としてこれを採用しない。

次に、被告坂本が被告下村の雇主であると認めうる証拠はなく、また、前記のとおり、本件事故は、被告坂本ではなく、前記訴外会社の事業執行中に発生したものであるから、被告坂本が、本件事故につき、民法第七一五条に基づく責を負う謂はない。

三  (過失相殺)

前記のとおり、本件事故は、被告下村及び原告の過失によつて生じたものであるから、被告等が賠償すべき原告の損害の算定につき、原告の右過失を斟酌すべきところ、前記認定事実によれば、右両者の過失割合は、被告下村六に対し、原告四と認めるのが相当である。

四  (損害)

前掲甲第一三ないし第一六号証、いずれも成立に争いがない甲第一八、第一九号証、乙第一、第二号証、原告本人の供述を総合すると、原告は、本件事故による前記傷害のため、昭和四七年三月一三日より同年五月一一日まで六〇日間入院し、退院後も同年五月一二日から昭和四八年一月二二日まで通院して(実治療日数三九日)、それぞれ治療を受け、症状固定したが、後遺障害として、左鎖骨中央部の突出、右胸部の変形、視野の変状、視力障害、左肩関節の機能障害があるところ、自賠責保険査定所における原告の後遺障害の等級の認定では左鎖骨中央部の突出、左肩関節の機能障害のみがそれぞれ第一二級に該当し、併合の結果原告の後遺障害の等級は第一一級と認定されたこと、原告は、右後遺障害により長時間の肉体労働は不可能であり、また、左鎖骨の変形だけでも就職に悪影響があること、以上の事実を認めうる。右認定を左右する証拠はない。

1  治療費実費 金二万三、七九〇円

成立に争いがない甲第二三ないし第二五号証、弁論の全趣旨により成立を認めうる同第二六号証によると、原告は、本件事故により治療費実費として原告主張の合計金三万九、六五一円の支出を余儀なくされた事実を認めうるところ、本件事故における原告の前記過失を斟酌すると、被告等が賠償すべき治療費実費はうち金二万三、七九〇円である。

2  附添看護料 金六万三、三〇〇円

前掲甲第一三号証、同第一五号証、成立に争いがない甲第二一号証の一ないし六によれば、原告は、前記入院期間中の附添看護料として金一〇万五、五〇〇円を要した事実を認めうるところ、本件事故における原告の前記過失を斟酌すると、被告等が賠償すべき附添看護料はうち金六万三、三〇〇円である。

3  通院費用 金三、二八二円

成立に争いがない甲第二二号証、弁論の全趣旨により成立を認めうる甲第三〇号証によれば、原告は、前記通院のために、金五、四七〇円の交通費の支出を余儀なくされた事実を認めうるところ、本件事故における原告の前記過失を斟酌すると被告等が賠償すべき通院費はうち金三、二八二円である。

4  入院雑費 金一、六三五円

原告が、前記入院期間中、入院雑費として少くとも原告主張の金二、七二五円を要したであろうことは公知の事実であるところ、原告の前記過失を斟酌すると、被告等が賠償すべき入院雑費はうち金一、六三五円である。

5  原告所有の単車の運搬料及び破損料 金二万一、三〇〇円

弁論の全趣旨により成立を認めうる甲第一〇号証、成立に争いがない同第二〇号証の一、二、原告本人の供述を総合すると、本件事故によつて、原告は、本件事故の約一年前友人から金四、五万円で買つた単車を本件事故によつて大破し、その破損単車の運搬費として金三、五〇〇円を支出したこと、右単車の修理費は、右単車の時価を超える金七万〇、八八〇円を要すると見積られたため、結局修理をしなかつたこと、本件事故がなかつたとすれば、五、六年間は使用可能であつたこと、以上の事実を認めうる。右認定に反する証拠はない。

右認定事実によれば、原告所有の単車は本件事故により全損となつたとみるのが相当であるところ、本件事故当時における右単車の時価は、次の算式により金三万二、〇〇〇円と認めるのが相当である。

40,000円×4/5=32,000円

従つて、原告は、本件事故により、原告所有の単車の運搬料及び破損料として合計金三万五、五〇〇円の損害を蒙つたというべきところ、原告の前記過失を斟酌すると、被告下村が賠償すべき金員は、うち金二万一、三〇〇円となる。

なお、原告は、右大破した単車の保管料として金二万八、〇〇〇円を支出したところ、右支出は本件事故によつて生じた損害である旨主張するけれども、右単車は、前記のとおり全損となつたものであるから、右保管料は本件事故と相当因果関係のある損害とはいい難い。よつて、原告の右主張は、それ自体失当である。

6  眼鏡買替金 金八、四〇〇円

弁論の全趣旨により成立を認めうる甲第二九号証によれば、原告は、本件事故により眼鏡の買替を余儀なくされ、その費用として金一万四、〇〇〇円を支出した事実を認めうるところ、前記原告の過失を斟酌すると、被告下村が賠償すべき金員は、うち金八、四〇〇円である。

7  慰藉料 金七五万円

前掲甲第六号証、原告本人の供述によれば、原告は、本件事故当時満一八歳の高校二年生であつたところ、本件事故により約四ケ月間休学の止むなきに至り、そのため高校三年に進学が遅れたわけではないが、右休学及び前記後遺症により一時勉学不能となり国立大学進学もあきらめ、心ならずも中京大学に進学し、多大の苦痛を味つている事実を認めうる。

右認定事実並びに原告の前記入院及び通院期間、後遺症、本件事故の態様、原告の傷害の部位、程度、原告の過失等本件における諸般の事情を斟酌すると、被告等が賠償すべき原告の慰藉料は金七五万円と認めるのが相当である。

8  逸失利益 金九六万三、六五五円

原告は、本件事故による前記後遺症によつて労働能力の二〇パーセントを喪失したと認めるのが相当であるところ、前掲甲第六号証、原告本人の供述によれば、原告は、昭和二八年六月二六日生れであり、本件口頭弁論終結時(昭和五二年七月一一日)においても中京大学在学中で、同大学を満二四歳で卒業することが窺われる。

右認定事実によれば、原告は、大学卒業後三九年間の満六三歳過まで稼働可能というべきであるから、本件事故による原告の逸失利益の本件事故当時の現価は、その基礎年収を原告主張の統計調査報告による金六三万二、四〇〇円と認めて、ライプニツツ式計算により年五分の割合による中間利息を控除すると、次の算式により金一六〇万六、〇九三円である。

632,400円×0.2×(17.7740-5.0756)=1,606,093円

ところで、原告の前記過失を斟酌すると、被告等が賠償すべき逸失利益は、うち金九六万三、六五五円である。

五  (損害の填補)

原告が自賠責保険から金一二五万円の給付を受けた外、被告等から金三万円の支払を受けたことは原告において自認するところである。

なお、右自賠責の金一二五万円の内訳は、斎藤病院に原告の治療費として支払われた金三三万四、三八〇円、八幡製鉄病院に同じく治療費として支払われた金三万六、五六五円、原告本人が給付を受けた金八七万九、〇五五円であることは、弁論の全趣旨により成立を認めうる甲第三一号証によつて明らかである。

自賠責保険から支払われた右治療費の合計金三七万〇、九四五円のうち、原告の前記過失を斟酌すると、被告等が賠償すべき金額は金二二万二、五六七円であるから残額金一四万八、三七八円は、原告が自賠責保険から給付を受けた金八七万九、〇五五円と共に、前項の被告等が賠償すべき原告の損害に填補されるべきである。

従つて、前項によつて認定した被告等が賠償すべき原告の人的損害(前項1ないし4及び7、8)の合計は金一八〇万五、六六二円であるところ、うち金一〇五万七、四三三円(金一四万八、三七八円+金八七万九、〇五五円+金三万円)についてはその損害を填補されたというべきである。

六  (結論)

以上の次第で、被告等に対する原告の各本訴請求は、各自被告等に対し、金七四万八、二二九円及び本件事故の日の翌日である昭和四七年三月一四日より、更に被告下村に対しては右金員の外金二万九、七〇〇円及びこれに対する昭和四七年三月一四日より、いずれも各完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で正当として認容し、その余は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 寒竹剛)

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